チーズケーキ・ムーン
きのうの夜、見上げた空には
細い三日月が控えめに浮かんでいた。
濃い黄色で、チーズケーキの色に似ていた。
わたしが、大好きなあのひとに
いちばん多く焼いたお菓子。
クリームチーズの箱に書いてあるレシピで、創ってみたら
それはそれはおいしかった。
寒い寒い、冬だった。
ひとつひとつ、わたしは、
彼のあたらしい表情を知り、
切なさと優しさと、大人と少年が入り交じる
万華鏡のような彼の世界で
ぐるぐる溶けて
バターのように熱くカリカリに熱された。
季節は何周もして
あっさりと年月は重ねられてゆくような錯覚に陥るけれど
どの季節にも
色褪せない思い出がある
だから 月を見ると
いつも泣きたくなる。
恋しくて、いとおしくて、
月だけは、
ちゃんと照らしてくれているような気がして。